小村雪岱随筆集
「正直な話、私は別に苦心して描いたものもなければ、
また今までに格別に苦心した経験もないのである。
そんなわけで、一事が万事、
自分は甚だつまらない人間だと常に考へている。」
新編雑感で小村雪岱はそう述べています。
「鏡花先生」との出会い、
舞台「白糸の滝」を「面白く拝見」する一方
映画版を見落としたのは「甚だ残念」、と語り、
30年代後半、
「洋画の良いところに敬服して其の尺度でものを見る心構へが、
日本の作品の良い所を見ぬようにさせは致しませんでしょうか」
と当時の映画の風潮に警鐘を鳴らし、
「併し私は日本の俳優の持つ、幽韻とでも申しませうか、
余韻と言いますか、洋画に出て居ない芸の味が
あると思います」と語ります。
「狂恋の女師匠」や「おせん」のような今は見られぬ作品のことから
「春琴抄」のセット、衣装へ取り組む意気込み、
と共に、奈良や「たけくらべ」の街を歩き、仏像収集を唯一の
趣味と語りながら、
尽きせぬ鏡花との関係、その装丁の術、思想を綴っています。
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 The Post
「私たちの時代と、これ以上に深い関係性を持つ物語は
ないように思えたのです。
ですから私は、「歴史はどうして繰り返される
んだ?」と私自身に問いかけたのです。」
スピルバーグによる、世界を惑わす失われたアークのような
機密文書をめぐるワシントン・ポストの攻防
が描かれています。
「この作品を「リンカーン」「ブリッジ・オブ・スパイ」に続く
三部作とは考えていません。確かにそれらは政治スリラー
ではあるのですが、三部作と言うよりは、「リンカーン」と
より密接な関係を持つ作品だと思います」
恐竜の足音のように、
新聞社に響きを与える輪転機の運動、
巨人が少女と訪れた、英国女王のように
柔らかくも厳しい、メリル・ストリーブ演じる社長・・
「映画は政治的にも歴史的にも、
またファクト・チェックをめぐっても、
複雑に作ることができます。そしてどんな事実があったのかに
ついても、強烈な印象を映画は与えることもできます。
この観点から見ると、この作品は曇りのない作品であり、また
何が描かれているのか理解できないような作品では
ありません。」
「・・もし私が映画監督にならなかったら、良いジャーナリストに
なっていたと思います。私はジャーナリストのようなものに
なりたかったのかもしれません」
春の試聴会。
今回は、LP以外を多く持参して「試聴室」に
参りました。
シングルでビートルズのクリスマス、
10インチ盤でプレステージのモンク・トリオ、
同じく「超音響」と名乗るシャープフラッツなどのオムニバス、
45回転盤のジュリー・ロンドン、
左右スピーカーの真ん中で、本当にロンドンが歌っている様に
聞こえて来ます。そして、
モンクのオリジナル盤と思われるLP「It's Monks time」。
最近、シリーズで出続ける
シングル「東京战争戦後秘話」、と
「殺しの烙印」は思いの外、音が良く
その他、
ヘレン・メリル・ウィズ・Cブラウン
・・デジタル・マスターのLPは、メリルの
声が強調されていました・・
オリジナルに近い盤の音は、メリルと伴奏は
同じ程度に入っていました。
フルトヴェングラー&ディースカウのマーラーのテスト盤とオリジナル盤。
テスト盤に対して、オリジナル販売盤は、やや音がこもり気味です。
「ワルツ・フォー・デビー」、
「カインド・オブ・ブルー」の双方ステレオ版の、
オリジナル・アメリカ盤とヨーロッパ盤は
ともに素晴らしく、
ジャズの響きは、
レコードでなければその生な音が総体として出て来ない、
という思いが強められました。