清方の旅-涼を求めて金沢八景へ-

 

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  小津安二郎の墓参に

  円覚寺を訪れた後、

  鏑木清方記念美術館にも

  立ち寄りました。

 

 

「私が金沢を去ってから十年余経つが、

 戦争は愈々

 あの土地の風光を

 台無しにして了ったらしい」

 

 鏑木清方が戦後そのように振り返る

 金沢八景

 その大正時代には家族でなんども訪れ、

 別荘ものちに造り、

 

 そこで描かれた数々の絵、特に日記は、

 当時の風景のみならず、家族を通しての

 生活の有様が描かれていました。

 

 「昔の人がここの風景についてかいたものには、

  挙って天下の絶景だと賞賛している」

 

  夜空の花火、川岸の遊び、縁側での読書の風景、

  その名残のあったそれらの絵には、

  スケッチながら、またはそれゆえに

  鏑木清方の多彩な技量が、よく知られた絵以上に

  現れていたようにも思えます。

 

 「だから今もし初めて金沢を訪う人があれぱ、

  その人は

  金沢八景などとは古人が人を欺くものだと

  怒るかも知れない。」

 

 そして広重や江戸名所図会を見ることで、

 

 「思いを軍魔が破壊の以前に馳せて

  あの山、この水と静かに

  在りし姿を偲ばれたら、

 

  古人の心を今にしてよみがえらせることが

  出来るのではなかろうか。」

  

鎌倉市鏑木清方記念美術館